著作権法②

著作物性

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各論

著作物の要件

著作権法2条1項1号。

①思想又は感情②創作的③表現したものであって、④文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

著作物性の要件

  1. 思想または感情
  2. 表現
  3. 創作性

①思想または感情

  • 一定の水準があるわけではない

  • 対象とならないものは存在

たとえば…

  1. 人間以外が表現主体(コンピューターなど)
  2. 自然に存在するもの
  3. 事実の羅列(10条2項)

②表現

  • 他者によって認識可能であること

アイデア・表現二分論

  • 思想感情(=アイデア)の発露、外部から認識可能な状態が表現

  • 文化の発展という見地から、アイデアは同じでも、表現が異なるものを保護

【判例】脳波数理解析論文事件(大阪高判平成6年2月25日)

解明過程は、その著作物の思想そのものであると考えられ、…解明過程そのものは著作権法上の著作物に該当しないものと解される。

③創作性

  • 著作者の何らかの個性が顕れていればよい
  • 特許法との違い(新規性、進歩性が不要)

偶然の暗合

「他人の著作物に依拠せず偶然同様の表現を行った場合は、創作性を失わず、別個の著作物として保護」される

創作性が否定される例

  • デッドコピー : 他の著作物を単に模倣したに過ぎない場合
  • ありふれた表現 : 表現の選択の幅が狭く、誰が表現しても同じようになる場合
  • アイデアと表現の一致 : あるアイデアを表現するためには、一定の表現を取らなければならない場合

判例

スローガン事件(東京地判平成13年5月30日)

「創作的に表現したもの」というためには、当該作品が、厳密な意味で、独創性の発揮されたものであることまでは求められないが、作成者の何らかの個性が表現されたものであることが必要である。…ごく短かく、又は表現に制約があって、他の表現がおよそ想定できない場合や、表現が平凡で、ありふれたものである場合には、筆者の個性が現れていないものとして、創作的に表現したものということはできない。

575調の交通安全スローガンに創作性を認めた事例

城の定義事件(東京地判平成6年4月25日)

本件定義は、…城の概念の不可欠の特性を簡潔に言語で記述したものであり、原告の学問的思想そのものと認められる。…原告の学問的思想と同じ思想に立つ限り同一又は類似の文言を採用して記述する外はなく、 全く別の文言を採用すれば、 別の学問的思想による定義になってしまうものと解される。

城の定義について、創作性を否定した事例

ライブドア裁判傍聴記事件(知財高判平成20年7月17日)

…「創作的に表現したもの」というためには、当該記述が、厳密な意味で独創性が発揮されていることは必要でないが、記述者の何らかの個性が表現されていることが必要である。…専ら「事実」を、格別の評価、意見を入れることなく、そのまま叙述する場合は、記述者の「思想又は感情」を表現したことにならないというべきである。

裁判の傍聴記について、創作性を否定した事例

類型ごとの判断

  1. 言語

・短い表現 : 表現の幅が狭いため、著作物性が認められにくい

・俳句や川柳など、上述の例に当てはまらない場合も存在

  1. 舞踊・無言劇

【判例】 Shall We Dance?事件(東京地判平成24年2月28日)

短い身体の動き自体に著作物性を認め、特定の者にその独占を認めることは、本来自由であるべき人の身体の動きを過度に成約することになりかねず、妥当でない。…社交ダンスの振り付けが著作物に該当するというためには、それが単なる既存のステップの組合せにとどまらない顕著な特徴を有するといった独創性を備えることが必要であると解するのが相当である。

ただし、近年の判例ではバレエの振り付け、日本舞踊の振り付け、フラダンスの振り付けに著作物性を認めたものが存在する。

  1. 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形

【判例】「ふぃーるどわーく多摩」事件(東京地判平成13年1月23日)

一般に、地図は、…個性的表現の余地が少なく、文学、音楽、造形美術等の著作に比して創作性を認め得る余地が少ないのが通例である。それでも、記載すべき情報の取捨選択及びその表示の方法に関しては、…なおそこに創作性が表れ得るものということができる。

データに忠実に沿って作られた図形の著作物には著作物性が認められないことが多い

  1. 写真

【判例】すいか事件(東京高判平成13年6月21日)

写真著作物における創作性は、…被写体とこれを撮影するに当たっての…手法等における工夫の双方であり、その一方ではないことは、論ずるまでもないこと…である。

屋内に撮影場所を選び、西瓜、籠、氷、青いグラデーション用紙等を組み合わせることにより、人為的に作り出された被写体であるから、被写体の決定自体に独自性を認める余地が十分認められるものである。

【判例】スルメゲット事件(知財高判平成18年3月29日)

…本件各写真には、被写体の組合せ・配置、構図・カメラアングル、光線・陰影、背景等にそれなりの独自性が表れているということができる。…前記認定のとおり、…それなりの独自性が現れているのであるから、創作性の存在を肯定することができ、著作物性はあるものというべきである。他方、…その創作性の程度は極めて低いものであって、著作物性を肯定し得る限界事例に近いものといわざるを得ない。

著作物性が認められない写真とは?
  • 撮影プロセスが自動化された写真(証明写真、定点カメラによる自動撮影など)
  • 絵画等を忠実に撮影した写真 (版画写真事件(東京地判平成10年11月30日))
  1. 建築物

【判例】グルニエ・ダイン事件(大阪高判平成16年9月29日)

一般住宅の建築において通常加味される程度の美的創作性が認められる場合に、「建築の著作物性」を肯定して著作権法による保護を与えることは、同法2条1項1号の規定に照らして、広きに失し、社会一般における住宅建築の実情にもそぐわないと考えられる。…「建築の著作物」であるということができるのは、客観的、外形的に見て、それが一般住宅の建築において通常加味される程度の美的創作性を上回り、居住用建物としての実用性や機能性とは別に、独立して美的鑑賞の対象となり、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性を備えた場合と解するのが相当である。

  1. 美術

【判例】⾦⿂電話ボックス事件(奈良地判令和元年7月11日)

公衆電話ボックスという日常的なものに、その内部で金魚が泳ぐという非日常的な風景を織り込むという原告の発想自体は斬新で独創的なものであるが、これ自体はアイディアにほかならず、表現それ自体ではないから、著作権法上保護の対象とはならない。…アイディアが決まればそれを実現するための方法の選択肢が限られることとなるから、この点について創作性を認めることはできない。…他方、原告作品について、公衆電話ボックス様の造形物の色・形状、内部に設置された公衆電話期の種類・色・配置等の具体的な表現においては、作者独自の思想又は感情が表現されているということができ、創作性を認めることができるから、著作物に当たるものと認めることができる。

*被告のオブジェは上記引用部分後半にいう「具体的な表現」が異なっていたため、著作物の複製に当たらないと判示された。

  1. 応用美術
応用美術とは

もっぱら美的鑑賞の対象となる純粋美術とは異なり、実用品に施される美術のこと。

机や椅子、電化製品などの量産品に施されるデザインを含む。

意匠権との関係

意匠権 = 「工業上利用することができる意匠」

判例

ファービー人形事件(仙台⾼判平成14年7⽉9⽇)

実⽤品に供されあるいは産業上利⽤されることを⽬的として制作される応⽤美術については、…著作権法の制定経過や同法が応⽤美術のうち美術⼯芸品のみを掲げていることなどを考慮すると、現⾏著作権法上は原則として著作権法の対象とならず、意匠法等⼯業所有権制度による保護に委ねられていると解すべきである。ただ、そうした応⽤美術のうちでも,純粋美術と同視できる程度に美術鑑賞の対象とされると認められるものは、美術の著作物として著作権法上保護の対象 となると解釈することはできる。そこで、美術の著作物といえるためには、応⽤美術が、純粋美術と等しく美術鑑賞の対象となりうる程度の審美性を備えていることが必要である。

「電子玩具としての実用性および機能性保持のための要請が色濃く現れている」ファービー人形。これは美感を削ぐものであるから、純粋美術とは同視できないと判示された。

仏像彫刻事件(神⼾地裁姫路⽀部判昭和54年7⽉9⽇)

本来産業上の利用を目的として創作され、そのものだけ独立して美的鑑賞の対象となしがたいものは、…著作権を付与さるべきではないが、これに対し、実用品に利用されていても、そこに表現された美的表象を美術的に鑑賞することに主目的があるものについては、純粋美術と同様に評価して、これに著作権を付与するのが相当である…(仏像彫刻について、)仏壇の装飾に関するものであるが、…独自の技法を案出駆使し、…それ自体で美的鑑賞たりうる彫刻であると観察することができるものであり、…専ら美的表現を目的とする純粋美術と同じ高度の美的表象であると評価しうる…。

大阪市ピクトグラム事件(大阪地判平成27年9⽉24⽇)

応⽤美術の著作物性については、種々の⾒解があるが、…それが実⽤的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得るような美的特性を備えている場合には、美術の著作物として保護の対象となると解するのが相当である。…このような図柄としての美的表現において制作者の思想、個性が表現された結果、それ自体が実⽤的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている場合には、その著作物性を肯定し得るものといえる。

その他、TRIPP TRAPP事件(知財⾼判平成27年4⽉14⽇)など。