行政法のうち、行政事件訴訟に関してです。

総論

処分取消訴訟

要件

  1. 処分性 : 行政庁の処分であること
  2. 原告適格 : 原告適格を有する者が、自己の法律上の利益に関係のある違法を主張して提起すること
  3. 被告適格 : 被告適格を有する行政主体等を被告とすること
  4. 管轄権 : 管轄権のある裁判所に提起すること
  5. 出訴期間 : 出訴期間内に提起すること
  6. 例外的に審査請求措置が取られている場合は、審査請求を経ること

処分性

一言で表すと…

公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている行為のこと

(ごみ焼却場事件 : 最判昭39年10月29日)

県公安委員会が不当勧誘を行った店舗に対し下した営業停止命令、行政機関情報公開法に基づく情報公開請求に対する不開示決定などに認められる。

都市計画法上の地域指定

土地の利用について「商業地域」「工業地域」等の地域指定がなされ、その指定ごとに異なる容積率や建ぺい率に関する基準が適用される。

基準不適合の場合、建築確認を受けられないので、土地の所有者にとって重要な関心事である。

この指定につき、一定の法状態の変動を生ぜしめることは認めながらも、その効果は法令制定時と同様の一般的抽象的なものに留まること、また、後続の処分(=建築確認の拒否)を争えることを理由として、その処分性を否定(最判昭57年4月22日)

交通反則金の納付通告

交通違反をして交通反則金の納付通告を受け、そのまま交通反則金を支払わなかった場合、刑事訴追され裁判で反則行為の有無を争うことになる。

刑事訴追は嫌だが交通反則金にも不服があるという場合、納付通告の取消訴訟ができるか。

これにつき、判例は、反則行為の有無の審判は刑事手続ですることが予定されているとして、処分性を否定した(最判昭57年7月15日)

ごみ焼却場の設置行為

ごみ焼却場の設置行為に関して、建設用地の買収行為は私法上の契約であり、設置計画及びそれを議会に提出することに関しては内部手続きにとどまるとして、一連の行為の処分性をすべて否定(最判昭39年10月29日)

病院開設中止勧告

地域の病床数が医療計画より過剰であることを理由として病院開設中止勧告を受けた者がその取消を求めた訴訟において、最高裁は当該勧告につき処分性を認めた。

病院開設中止勧告は行政指導として定められているが、当該勧告に従わない場合、相当程度の確実性をもって、病院を開設したとしても保険医療機関の指定を受けることができなくなる。保健医療機関の指定を受けずに診療行為を行うことは、国民皆保険制度が採用されている我が国ではきわめて困難と言わざるをえない。こういった、保険医療機関指定が持つ意義を併せ考え、処分性が認められた(最判平17年7月15日)

原告適格

一言で表すと…

「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)

法律上の利益?

名宛人は当然これに含まれるが、第三者に対してはどこまで原告適格が認められるか…

法律上の利益という言葉の解釈につき、2つの説が存在

①「法律が直接保護している利益に限る」

②「裁判上の保護を与えるに値する利益」

最高裁は①の立場に立ちつつ、住民の健康安全に係る場合原告適格を若干緩和してきた。

競業者・競願者

銭湯Aのそばにスーパー銭湯Bが開業する事になった場合、AはBの営業許可取り消しを求められるか。

最高裁は、公衆浴場法に定められた店舗間の距離制限規定に着目し、その趣旨として国民の環境衛生という公共の福祉のほか、銭湯の濫立による既存業者の経営の不合理化を防ぐことにあるとし、原告適格を認めた(最判昭37年1月19日)

(cf. 前者が消極目的規制、後者が積極目的規制)

放送局の免許のように、複数の申請者のうち一者だけに営業が認められるという場合、免許申請を拒否されたCが、競願者であるDに付与された免許の取り消しを求めることはできるか。

最高裁は、Dに付与された免許と、Cに対する免許拒否処分は表裏の関係にあることから、Dに対する免許が違法とされれば、Cが免許を受けることもありうるとして、Cの原告適格を認めた(最判昭43年12月24日)

周辺住民の生命、身体の安全

開発許可や施設の設置許可など。

処分の根拠法規が周辺住民の手続き的参加を定めている場合、周辺住民の個別利益を保護する趣旨と解釈され原告適格も認められやすい傾向。

1. 長沼ナイキ事件

自衛隊基地の用地にするため、農林水産大臣が保安林の指定を解除した事件。

最高裁は、利害関係人の利益保護のための手続き規定があるとして、周辺住民の原告適格を肯定。

(最判昭57年9月9日)

2. 新潟空港訴訟

騒音被害を受ける可能性のある空港周辺住民が、定期航空運送事業免許の取り消しを求めた事件。

最高裁は、関連法規である飛行場周辺航空機騒音防止法の趣旨を踏まえた上で周辺住民の原告適格を肯定。

(最判平元年2月17日)

手続きへの参加規定がなくとも、住民の健康や安全に係る場合、比較的広く原告適格が認められる。

原子炉の設置許可、傾斜地におけるマンションの開発許可などに関しても、被害が直接的に及ぶことが想定される周辺住民に対し、原告適格が肯定された。

環境・消費者利益

1. 伊場遺跡訴訟

P件教育委員会がQ市内のR遺跡について史跡指定を解除したことに対し、同遺跡を研究対象にしてきた研究者らが取り消しを求めた訴訟。

最高裁は、県民等が文化財から受ける利益は公益に吸収され、同遺跡の研究者であっても同様であるとして原告適格を否定。(最判平元年6月20日)

2. 主婦連ジュース訴訟

ジュースの表示に関する公取委の認定に付き、消費者に誤解を与える表示であるから景表法違反として、消費者団体が不服申立てをした事件。

最高裁は、景表法の規定により一般消費者が受ける利益は、公益保護の結果として生ずる反射的な利益であり、公益に完全に包摂される性質のものに過ぎないとして、法律上の利益であるとはいえないとした(最判昭53年3月14日)

2004年行訴法改正

「法律上の利益」の解釈に関する「考慮事項」

  1. 当該法令の趣旨目的
  2. 当該処分において考慮されるべき利益の内容・性質
  3. ①を考慮するにあたって、当該法令と目的を共通にする関係法令の趣旨目的をも斟酌すること
  4. ②を考慮するにあたって、当該処分が根拠法令に違反してなされた場合に害されることとなる利益の内容・性質と態様・程度をも斟酌すること

この改正を踏まえ、「健康・生活習慣に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある周辺住民」に対し、原告適格が認められた事例。(小田急線高架化訴訟・最判平17年12月7日)

狭義の訴えの利益

たとえ処分の相手方であっても、処分の効果が完了した後には訴えを提起できない。

取消訴訟を提起するためには、取り消しの必要性が必要。これが「狭義の訴えの利益」

ただし、処分の取り消しによって回復すべき法律上の利益を有する者であれば訴えの利益が認められる

たとえば、除名処分を受けた議会議員が、取消請求中に任期が満了したとして、仮に処分が取り消されたとして議員の身分は回復しないが、歳費については請求することができる。したがって訴えの利益あり

被告適格

誰を相手取って訴訟を提起するか。原則として、当該処分庁が所属する国または公共団体。

建築確認のように民間にも開放されている場合で、国土交通大臣等の指定を受けた者(指定機関)が建築確認を行った場合のように処分庁が国や公共団体に属さない場合は、当該処分庁を被告としなければならない(行訴11条2項)。

裁判管轄

原則として、取消訴訟は被告または処分庁の所在地を管轄する裁判所に提起しなければならない(行訴12条1項)。

ただし、国または独立行政法人等を被告とする場合には、原告の普通裁判籍所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所にも、取消訴訟を提起することができる(行訴12条4項)

出訴期間

原則として、取消訴訟は処分があったことを知った日から6ヶ月以内に提起しなければならない(行訴14条1項)。(主観的出訴期間)

ただし、「正当な理由があるとき」は6ヶ月を過ぎても訴訟を可能とする(同項但し書き)。

処分を知っていたか否かに関わらず、処分の日から1年を経過したときは、取消訴訟を提起することができない(同条2項)。(客観的出訴期間)

「正当な理由があるとき」につき、主観的出訴期間と同じ。

取消訴訟以外の抗告訴訟については出訴期間の制限なし。

教示制度

行政庁は、書面で処分を行う場合には、当該処分の相手方に対し、取消訴訟の被告とすべき者、出訴期間、審査請求前置が定められている場合にはその旨を書面で教示しなければならない(行訴46条)